読了。
ハイテクビジネスの教科書としてこれほど有名な本もないと思うので月並みな書評はかかない。

この本が、支持され続けているのは切り口の鋭さとシンプルで分かりやすい結論があるからだと思う。あーだこーだと長々と書き連ねたあげくに、結局ケースバイケースです。などとお茶を濁すようなビジネス書が氾濫している中でこれは貴重なことだと思う。
しかしながら、その切り口の鋭さを得るためにこの本は書いてないところでいくつか仮定を置いてある。

・その分野はブランド力が弱く、顧客は製品を機能や値段で選んでおり、ファッションとしては見ていない。
・製品は容易に代替可能なものであり、他社製品への乗り換えにあたって新たな学習を特に必要としない。
・製品の使用方法は顧客間で独立しており、顧客は他の顧客と同一製品を選ぶメリットがほぼ、あるいはまったく存在しない


もっと具体的に書くと

・昔RISCという言葉がはやっていた頃IntelのCPUはRISCチップより大幅に遅かったが、Intelは牙城を守った。
顧客は「速度」に一番のプレミアムを支払ったが、過去のプログラムが動かない製品は同一カテゴリとは
みなされなかった。
・Macは使いやすさでWindowsを上回るとしばしば評されながら、Windowsのシェアをぜんぜん奪えていない
・ソニーと松下が同じ機能、同じ性能の製品を発売したらソニー製品のほうが1割ほど高い値段がつく。
ソニーは合コンで見せびらかせるが、松下はこうはいかない。
(最近はちょっと事情が違うようだけれども)


つまり、僕にはハイテク企業の利益の源泉は代替不可能なところ、乗り換えにものすごく(コスト的にまたは心理的に)抵抗がある状況に「ゲームのルールを自分に有利なように構築してしまっている」所だと思っている。
だから、特に米国では2位以下の企業から標準化の大合唱が始まることが多い。
技術経営の観点からはこういうゲームルールの構築するのが120点の答えで、変わっていくルールにうまく追従するのは80点の答えであろう。
その辺をすっとばして(もちろん中途半端に書くと収拾がつかなくなるのでこの本の切り捨て方は正しい)ある局所的なシーンを解説している本である。という点を忘れなければこの本は本当にすばらしいと思う