PC Watchの難航するVistaの国内デジタル放送対応という記事によるとWindows Media Centerの日本対応が難航しているらしい。

これを見て僕は「ああ、やっぱり」と思ってしまった。


ARIBの運用規定とはどういうものなのだろう。ある機器ベンダのエンジニアは運用規定について「憲法のようなもの」と指摘する。運用規定で規定されているのは、こういったルールで運用しましょう、こういうことにはなっちゃダメよ、ということであって、実際にどのようなスペックのものを採用したらよいかという具体的な仕様が多く規定されているわけではないという。例えば、コピーワンスの運用の場合、同じものが何秒以上同時に存在してはいけない、などの“ルール”は規定されているが、それをどのようにして実現するかはメーカー側の“解釈”に任されているのだ。



まず、Microsoftのプレゼンで No formal certification と批判されている部分であるが、これはある意味正しい。
日本のTVは認可事業じゃないので、TVの販売にお国の認可はいらない。
(たしかアメリカはFCCの認可がいるはずなので、この点は日米で異なる)

ARIBはformal standard を配布する場所であって、formal certificationを行う場所でも
違反業者を取り締まる場所でもない。
(JISが犯罪者を取り締まる機関じゃないのと一緒)

また上記記事のルールと解釈の説明はちょいと語弊があって、上記記事で指摘されている”解釈”の話は
世の中の規格といわれているものは全部そうであって、ARIB特有の話ではまったくない。
HTMLの規格書を読んでもブラウザの内部実装はまったく書いてないし、MPEG2の規格書を読んでも
Decoderはこう動くよん。というのだけが定義されてあって、それに合うようにEncodeしろ。
という定義である。
あたりまえである。なんでわざわざ実装など説明しないといけないのだ。



じゃあ、何が問題とされているかというとARIBの規格書・運用規定の日本語がとにかく難解なのだ。
特に運用規定はひどい。

なぜ酷い文章になるかというと理由はいくつかあるのだが、そもそも形式言語でフォーマルに定義できるものは
運用じゃなくて規格の方に入っちゃってるよねー。ふつう。って話もあるが書いている人間が文章書きのプロじゃないことが挙げられると思う。
そもそもARIBは極めて貧乏な組織で
(あたりまえだ。ARIBの規格書を買う人間が、どれだけいるというのだ)
ARIBが発行している規格書・運用規定はテレビ局やメーカーから手弁当で集まった委員会で書いている、
そうした分科会でテレビ局の人間とメーカーの実装が分かる人間が集まって相互運用性の問題を
話し合って、これを文章に落としていくのだけれどMPEG2 Systemをまったく知らない局の人間と
実装を知りすぎちゃってるメーカーの人間で実装中立なドキュメントを起こすのはひどく難しいのだ。

結果、どこでもちゃんと定義されていない用語がバンバン出てくる規格書としてはちょっと困ったちゃんな
不思議ドキュメントが出来上がってくる。
中にはここはチラシの裏じゃないと小一時間(ry という文章もあるにはあるが、困ったことに
主だったメーカは分科会に出席していて行間の意図を読めるのであまり破綻していない。
していないから、運用規定のバージョンアップ時にも改善されない。という悪循環がある。

これがアメリカだと、局と懇意にしているメーカーがデファクトになって、それ以外のメーカーは
アンドキュメントなまま、デファクトの動作を解析して、同じになるようにしないといけないから、
どちらがいいかは微妙なところだが・・・・


じゃあ、どうすればいいのかと考えてみたのだが、これが思いのほか難しい。
メーカーにとって現状先行者利益があるから、課長クラスの高給取りを手弁当で
送り込んでいるのであって、認証団体をつくるからメーカーは金をだせ。といわれても
そんなメーカーに利益のまったくない話に交渉の余地は0だろう。

じゃあ、手弁当モードをやめればいいかというと、そもそもの人材不足の問題からは
右斜めにずれた方向に話がいっている気がするし、ARIBのどこにそんなお金があるの?
って気がする。
多分、役人の無駄遣いが批判されまくっている昨今の日本の現状だと政府からARIBにガンガンお金を出すってのも通りにくい。

日本はテレビ局もメーカーも複数あるから相互運用性が難しくなるのでもっと淘汰されれば話が簡単になるにはなるんだろうが、テレビ局が減ったら僕らユーザの利益を確実に害するよね(n'ω'`)

いったいどうしたらいいのかしら?
ちょっと考えさせられる記事である。